腎臓病の説明をする前に、まず、腎臓の働きを簡単に説明したいと思います。
腎臓は、体内環境を正常に保つために、体の中の毒素や老廃物、
余分な水分などを尿に集め、体外に放出させるための器官です。
昔から、肝腎要(かんじんかなめ)といわれるように、
とても重要な臓器といえます。
つまり腎臓病とはその腎臓の機能が低下して、様々な症状が
出てくることをいうのです。
そもそも腎臓病には様々な病態があり、腎臓病という言葉では
一概にはくくれません。
腎臓病とは、腎機能を著しく低下させる病態の総称であるといえるのです。
その腎臓病の中でももっとも多く、問題となっているのが腎炎、
特に糸球体腎炎と呼ばれる病気です。
糸球体は腎臓の中にある毛細血管で出来た一種のひだの様なもので、
このひだで体内の毒素や老廃物をろ過するのです。
つまり、この糸球体が炎症を起しろ過が正常に働かなくなってしまうと、
本来体外に出すべき老廃物が体内に残ってしまったり、
逆に必要な栄養素などが体外に放出されてしまったりするのです。
また、近年患者が増え続け、国民病の様相を呈してきている腎臓病が
「慢性腎臓病」です。
慢性腎臓病とはさまざまな原因でタンパク尿や血尿が出るようになったり、
腎臓の働きが一時的でなく徐々に落ちていく病気です。
国民病と言われているのは、なんと5人に1人が慢性腎臓病だという
データもあるからなのです。
さらに怖いことに、慢性腎臓病がそのままゆっくり進行すると、
腎機能殆ど機能しなくなる、腎不全になってしまう場合もあるのです。
そして、腎不全がさらに進行すると尿毒症になり、
最終的には透析療法が必要になってきてしまうのです。
腎臓病が進行して腎不全の状態になった場合、
腎臓の機能を回復させる治療法は現在でも開発されていません。
そこで、腎臓病で機能が低下してしまっている場合はそれを
代行する治療法が必要となります。
透析とは腎臓の「尿を作る」はたらきを代行する治療法なのです。
透析には大きく分けて、血液透析と腹膜透析の二つの方法があります。
腎臓病の透析方法について以下に説明しますので参考程度にご覧下さい。
【血液透析】
日本国内で、腎臓病などによって透析を受けている患者さん
全体の約95%が血液透析を受けています。
血液透析とは、汚れた血をきれいな血にするいわば血の総入れ替えです。
血液透析は1回約4時間、週3回行われるのが標準的な治療です。
まず、腕の血管に針を刺して、血液ポンプを使用し連続的に
血液を取り出します。
血液をいったん体の外に出し、ダイアライザーと呼ばれる
装置に血液を通します。
およそ1分間に約200mlの血液がダイアライザーを通り、
きれいになっていきます。
きれいになった血をもう一度体内に戻し終了となります。
透析を行うと腎臓病が治るとか、一時的に気持ちがよくなるとか
間違った知識をお持ちの方が多いようですが、実際には急激に体内の性質が
変わってしまい、腎臓病以外にも様々な副作用が発生してしまうそうです。
具体的には下肢がつったり、頭痛、倦怠感等といった症状が
腎臓病とは別に発生するようです。
【腹膜透析】
腹膜透析は、お腹の中にある腹膜という薄い膜を利用します。
腹膜は腎臓と同じろ過機能が備わっていて、
この腹膜内に透析液を注入し、そのまま貯留していると、
腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分が透析液の方に移動してきます。
これを体外に排出することにより血液を浄化する方法が腹膜透析です。
腹膜透析の長所としては、人工透析のような週3回の通院を
強いられなくてすみます。
腎臓病の方が、より健康な人に近い生活を送ることが出来るのです。
最初に腹膜内に透析液を注入・排出するためのチューブを埋め込む手術が必要と
なりまが、チューブを一旦埋め込んでしまえば、あとは自宅や職場で1回に
1~2リットルの透析液を1日に4~5回交換するだけでよいのです。
短所としては腹膜内に透析液を留めておくことから、
腹膜炎の原因になることがあることです。
腎臓病の症状で最も重要とされているのが初期症状です。
腎臓は、いわゆる「沈黙の臓器」と呼ばれているように、
腎臓病になった場合でも症状があらわれにくい臓器です。
腎臓病の初期症状は、手足や顔がむくむ・体のがだるい・疲れやすいなど、
体調不良や他の病気でもよく見られるような症状なので、
もしかしたら腎臓病かもという風に考えが及ばないものです。
しかし、そんな紛らわしい初期症状も微細な知識により見方も変わってきます。
腎臓病により手足や顔がむくむといった症状には、理由が二つ考えられます。
一つは、腎臓の機能が低下することにより、余分な水分や塩分などを排出
させる力が弱まっていることです。
もう一つは、尿の中に必要なたんぱく質が多量に溶け出してしまい、
血液中のたんぱく質が低下し、血管の中に水分を保っていくための浸透圧が
保てなくなることです。
また、腎臓病になられた方にお聞きすると、
「自覚症状は殆どなかったが、以前から疲れやすいとは思っていた」
というお答えがあるようです。
原因不明の疲れや倦怠感などの自覚症状がある場合にはそのままにはせず、
腎臓病の検査も含め全体的に検査をすることをお勧めいたします。
「高血圧」というものも腎臓病と密接に結びついています。
高血圧が腎臓病を招き、腎臓が悪くなると高血圧になりやすくなり、
その高血圧がまた腎臓病を進行させるといった、悪循環に陥ってしまいます。
最近では高血圧への関心が高まっているので、更にその先の腎臓病まで
考えを及ぼしてもよいかもしれません。
腎臓病が進むと、「尿」に症状が現れてきます。
尿が透明のうちは問題ありませんが、濁ってきた時は危ないです。
膿尿といい尿路に炎症が起きて尿に白血球がたくさん出ている症状です。
また、赤~赤褐色の場合は血尿で腎炎などの可能性があります。
こうなってきましたら迷わず泌尿器科を受診いたしましょう。
腎臓病の食事療法は、患者さんにとって腎臓に対する負担を軽減しながら、
薬によって腎機能を高めていくというのが重要な要素になります。
以下、腎臓病の食事療法の具体的な栄養素のとりかたになります。
・タンパク質-適量にとる。取りすぎても駄目です。
肉中心の食生活などにより、タンパク質を取りすぎると腎臓病の方は
血液中に窒素化合物などの老廃物が残ってしまい、
腎臓に過度の負担がかかってしまいます。
しかしながらたんぱく質は必要な栄養素です。
腎臓病とはいえ身体に欠くことのできない必須アミノ酸を多く含んだ
良質なタンパク質を適度にとる食事を心がけましょう。
・塩分-取りすぎない。
腎臓病になり腎機能が低下すると、塩分や水が尿として排泄できなくなり、
むくみの原因となります。また、高血圧も塩分のとりすぎによって起こります。
通常の食事ですと想像以上に塩分が含まれていることがありますので、
腎臓病の方は日ごろから減塩を意識した食事に切り替える必要があるでしょう。
・エネルギー-十分に補給。
慢性的なエネルギー不足になりますと、元々筋肉などに蓄えられている
タンパク質がエネルギーとして利用されてしまいます。
その際に血液中の老廃物が増え、腎臓病とは別に
腎臓に更に負担をかけてしまいます。
それを防ぐために糖質と脂質をバランスよく摂取する食事を心がけ、
エネルギーを十分に補給する食事を心がけましょう。
また、腎臓病患者の方は、長期的な闘病生活を送られている方が多いです。
体力をつけるためにも十分な食事を行いましょう。
・カリウムをとりすぎない
腎臓病になり腎機能が低下してくると、心臓に負担をかけるカリウムが体外に
排出されにくくなります。
野菜や果物の中にはカリウムの含有量が多いものが
在りますので、それらを抑えた食事が必要となります。
腎臓結石は腎臓の中に石のような塊(いわゆる結石)が出来る病気です。
腎臓結石と聞きますと激痛、というイメージがありますが一般的にそれは尿道を
通る尿路結石をいいます。
尿道を5ミリ以上の塊が通るのですから想像しただけで痛いですよね。
しかし腎臓結石はその名のとおり腎臓内にできる結石で、殆どの方が
自覚症状がなく、人間ドッグなどの超音波検査によって発見されるようです。
しかも腎臓結石は男性2%、女性の1.2%というデータもあるくらい
メジャーな病気になっています。
腎臓結石が見つかった場合、泌尿器科でレントゲン造影検査を受け、
そのときの結石の大きさや尿流の閉塞(へいそく)や停滞などを確認し、
治療計画を練ります。
腎臓結石が見つかってもすぐに治療するというわけでもなく、担当医やその他の
状況にもよりますが大きさが1センチを超えたら開始する場合もあるようです。
腎臓結石の治療で最近一般的なのが体外衝撃波結石破砕術と呼ばれるものです。
アニメの必殺技のような名称ですが、れっきとした医学用語です(笑)
体外衝撃波結石破砕術はX線で焦点が腎臓内にある結石になるように照準を定め、
音波の一種である衝撃波を結石に集中させて腎臓結石を破砕する治療です。
結石の周囲の組織を傷めることなく、副作用や後遺症もほぼないそうです。
現在、腎臓結石が発生する原因は複雑で十分には解明されていませんが、
結石の成分が尿に溶けきれず結石を形成してくることを考えると、
尿の量が少ない場合や、結石の成分が尿中に増えると
結石が発生しやすくなるではと考えられています。
腎臓結石の予防としては、まず十分に水分を取ること。また、腎臓結石の
成分はシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムが80%以上を占めるので
これらを含む食品を控えることが有効といわれています。
腎臓移植とは、提供者(これを一般的にドナーと言います)
から受給者(これを一般的にレシピエントと言います)
に組織や臓器を移し植えることをいいます。
腎臓移植には、献腎移植と生体移植があります。
献腎移植とは、心臓停止、もしくは脳死ドナーよりの腎臓移植です。
一般的にはドナーが日本臓器移植に登録をしておいて、ドナーの死後に
ネットワークを通じて、腎臓移植を希望しているレシピエントの中から
血液型及び組織適合があっている方より選択されて腎臓移植がなされます。
メリットとしては、ドナーの死後に腎臓移植がされる為、
当然提供者に負担がかかりません。
生体移植は、ドナーが両親、兄弟など身内による腎臓移植です。
生体よりの腎臓移植となりますので、ドナーの2つの腎機能が
同じ程度であることが必要で、さらに組織適合検査にて
腎臓移植移植に適することを確認する事が必要であります。
日本での生体移植は殆どが両親から子供への移植で、全腎臓移植数のおよそ
80%程となります。
生体移植条件は、レシピエントが自らの意思で腎臓移植を希望していること、
そしてドナーが自らの意思で腎臓の提供を希望していることとなります。
健康で自由な生活を送りたいというのは、多くの腎臓病の患者さんの
切なる願いであると思います。
その意味で腎臓移植は末期腎不全の唯一の根本治療法といえるものです。
通院回数も1~2ヶ月に1回程で済みますし、透析ではほぼ不可能に近かった
出産も行うことが出来ます。
通常の生活でしたら、ほぼ支障なく送れるようになります。
現在日本での1年間の腎臓移植数はおよそ700件ほどのようです。
1年間に約3万人の新規透析療法導入者があることを考えると、
まだまだ少ないのが現状です。
腎臓がんは「沈黙の臓器」にできるがんだけあって、小さいうちは
自覚症状が殆どでません。
そのためか以前ですと早期発見がとても難しく、
腎臓がんの進行により血尿がでたり、痛みを訴えるようになったりするまで、
なかなか発見ができませんでした。
最近では人間ドックや定期健診などによりCTスキャンを
取る機会が増えたこともあり、比較的早い段階で腎臓がんを
見つけることが可能になってきました。
他のがんと同様、腎臓がんも早期発見は転移の危険も抑えることができます。
残念なことに、腎臓がんの原因は特殊な腎臓がんを除いて未だ正確には
解明されておりません。定期的な診断による早期発見、これしか今のところは
方法がないようです。
また、腎臓がんの特徴として、多発性があげられます。
定期健診などで1つの腎臓がんが見つかった際、その腎臓のほかの部分
(一見正常に見える部分)にも画像上では見つからないほど小さな腎臓がんが
隠れていることがあります。これを「衛星病変」といいます。
こうなると厄介で、あとは切開手術による目視しか確認方法がなくなってきます。
腎臓がんの治療は今のところ摘出手術しかありません。
昔から腎臓がんといえば腎全摘術、つまり、腎臓全体を摘出しておりました。
最近では腎全摘術と平行して腎温存手術、つまり腎臓がんの箇所だけ摘出する
手術も増えてきているようです。
腎温存手術のよい所は、腎臓を丸ごととらないので、腎機能低下といった
危険が少ないこと、後ほど反対側に腎臓がんができた場合でも、
十分に対処できるといったことがあげられます。